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祝婚

「今村さん、木版画を始めたのなら、講習会に出てこない」と友人より誘いがあった。

聞くと、講師は木版画家の河内成幸氏だとのこと。氏とは面識はなかったが、その作品は前々からよく知っていた。私の世代に属するが年齢は私より下で版画家として若い頃より活躍していた。山梨からこんな素晴らしい版画家が生まれているとなんだか誇らしく思っていた。“山や海や街にニワトリがとんでいる絵”というと知っている方も多いかもしれない。氏は今や日本を代表する版画家だ。

初日のレクチャーが終り、次週までに下絵を持参するように指示された。さて、何を描こうか、どう描くか考えはじめたら、数週間前に出席した結婚披露宴が思い出された。

隣人でしかも友人の子息で、私の息子の幼友達でもある彼の披露宴に招かれたのだ。父親である友人はすでに亡く、母親もいなくて早くから自立していた。

結婚式や披露宴には何度も参加しているが涙を流したなんてことはなかった。しかし、この時は違った。日頃より涙を見せることが恥ずかしいと思う私、今まで人前で涙を流すことはなかった、だが、この時は押し止めようとしても自然に涙が溢れてきた。

「人間って素晴らしい、豪ジャスな音が聞こえてくるじゃーないか」昔どこかで読んだフレーズが頭の中を渦巻いた。

何とか版画にできないか。私の感じたことが少しは伝わるように色や形で構成できないか思考錯誤した。結婚する二人は特定の誰かでなくシンボルとしての形にした。

講習会は木版画での凹版刷りの習得が中心課題になっていた。凹版刷りに挑戦し何枚か刷ってみたが結局ものにならなかった。凹版刷りを入れる前の凸版を何版か重ねたところを今回の完成とした。 

制作過程としては中途半端だったかもしれないが、私にとっては記念すべき多色木版画の第1号となった。