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恋 慕
遠くから眺める恋はコミカルだ。
テンポの早い、のりのきいた、流行り恋歌を聞いているようだ。
驢馬に乗ったドンキ・ホーテが長い長い槍を振りかざし、風車に突進するように滑稽で喜劇的だ。掴まえられるかい、何を求めているんだい、そうからかいたくなる。
当の本人たちは夢中だ、真剣だ、死もいとわない激しい恋だってある。そんな恋でも遠くから眺めると劇中の人生劇を見ているように舞台の中の向こうの出来事だ。だけどハラハラし、ドキドキし、いとおしく思われる。
休日に娘が横浜に用事があるのでと言って出掛ける。華やいだしぐさを無視し無愛想に「行ってらっしゃい」と送り出す。
公園で寄り添う若い二人を横目に見ながらこれからどんな人生が横たわっているのだろうかと関わりも無い人生を想ってみる。
遠い昔の話を聞くように遠い恋を眺める。
溺れるがいい、歌うがいい、謳歌するがいい。驕り昂ぶるがいい。
時は待たない、時は過ぎゆく、時は今、かけがえのない今。
その子二十(はたち)櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
与謝野晶子