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焚 書
焼き尽くさなければならないと思った。
私の中の“理”を、焚書したいと思った。
悲しいことに長いことお勤めをしてきた身には、“理”の考えが染みついて離れない。
理解、理屈、理論、理路、倫理、はたまた、真理、原理、公理、道理そして理性や理知や理念、など“理”が示す「ことわり」や「すじみち」や「おさめること」など脱ぎ捨てたいと思った。
“感”に生きたいと思った。
感じるまま、感じる命に従って動きたいと思った。感覚、感性、感情、感動、快感など情動を大事にしたいと強く願った。そんな心持でこれからの生き方、版画の道を進めたいと思った。
「焚書」はご存じの通り中国の故事に由来する。直接には書籍を焼き捨てることだが学問、思想弾圧の意にも用いられる。
私は私の中の考え方を焼き捨て、新生したいと願った。
「三つの焚書」の中身は、一つは“理”だが、二つ目は“常識”、例えば木版には彫刻刀を使うというような常識、常識を疑うことで木版画の可能性に挑戦することなど。三つ目は“人との関係”。再構築して心地よい関係の中で生きたいと願った。 (2011年第88回春陽展 初出品作品)